だてな美食 on・line 食ping プロジェクト

6次産業化へ取り組む前に

売れている6次化商品の特徴

1.消費者に価格以上の価値を感じてもらえる商品である

2.ターゲット・利用シーンと商品コンセプトが一致している

3.消費者の共感を呼ぶようなコダワリやストーリー性がある

4.その土地・地域(資源)の特性を活かした商品である

5.最適な販売先や販売場所、売り方が出来ている

6.製造加工に必要な原材料や資金が確保できている

7.競合商品に対する新規性・優秀性・市場性が見込める

8.事業を継続するだけの経済性・採算性が見込める

9.無理な設備投資をしていない

売れていない6次化商品の共通点

1.価格設定。消費者が求める適正価格とのズレ(価値不足)

 ※商品が出来あがってから価格設定すると適正価格のズレが生じる(開発者都合)

2.品質(技術・知識・設備の不足)

3.分かりにくい、使いにくい、食べづらい(情報不足)

4.デザイン・商品形状が悪い(ブランディング不足)

5.類似商品や競合商品が多い(個性不足)

6.販売チャンネルが不明瞭・条件が合わない(販売手法)

インタビュー

さいとう ゆうこ

大学卒業してから音楽活動しながらテレビ局で宮城県の市町村を回り地元の人や特産の魅力を見つけるという仕事していた事が素材のベースとなっている。3年間番組制作をしてその後、音楽活動を本格的にやるため東京都へ、飲食店でバイトをし飲食店の仕組みのベースを知る。震災後、福島に戻り県の災対本部で放射能の情報を集めながら福島県の大変さを知り、何かできないかと思い、ゴスペルを教えていたことから音楽で元気にしようとイベントを企画。イベントを企画するのに行政とやりとりをする中で街づくりに興味を持ち、新しくできたNPOの事務局員として入り、取材に行った農家さんで積んである完熟桃が廃棄やタダ同然と知り、廃棄になる「もったいな」と感じた思いや、少しでも農家さんの利益となる方法はないかと感じた思いから「株式会社ももがある」を設立。

「ももふる」商品化への経緯とこれまでの活動。

震災後、何が福島にとって将来必要なのか。魅力的な要素なのか?資源なのか?と考える中で、やはり農業ではないかと感じていました。ある取材先での出来事です。取材先の皆さんが、積んであった完熟桃を廃棄するか格安で卸すか悩んでいました。それは農家さんのせいではなく、流通業者の都合だろうと思った。農家さん自身は販路を持っていない。仕方のない事でもある。捨てるか?ジュースにするか?kgあたり3円~5円で卸すか?の選択肢しかなかったんですよね~。

味は熟して美味しいのに廃棄やタダ同然といった不条理。何か商品を生み出し、価値のあるものになったら農家さんの収入が増えるかもしれない。農家さんを支えるため、何か私にできないのか?もし30年後に福島の農家さんが減ったとしても、同じ様に新しい事に挑戦する若い人が現れるかもしれない。そんな思いからスタートしました。

先ずは試作しないと提案もできないと思い、被災した3県に対しての補助金に駄目元で応募しました。幸いにも採択され、その補助金で桃を買い集めました。試作できるところも探して福島市内に加工できるところを見つけました。今の私の会社です。当初はピューレを作ろうと思っていて、ミキシングしているそばから空気に触れて色が変わっていくんです。どうしよう?これでは商品にできないなと思いました。翌日の準備のため、とりあえず皮を剥いてカットした桃を冷凍。翌日に瞬間冷凍した桃を食べてみたら美味しくてびっくり!この美味しさに価値があるのでは?と閃いたことを鮮明に覚えてます。その後、何回も何回も試行錯誤して誕生したのが、うちのメイン商品「ももふる」でした。商品化まで本当に苦労しました。

完熟だから砂糖を加えなくても味はしっかりしている。火を入れないで生に近いものが一年中食べれるのは他にないぞ!と自信をもって商品化しました。

初めは自分でやるつもりは無く誰か作ってくれないかな~と思っていたんです。借りていた加工場も震災の打撃を受けました。売り上げも前年の8割減となり会社を閉める事に。誰もやる人がいなかったんです。誰もいないなら私がやるしかない。そこを買い取って自分で起業したのが最初の経緯です。

その時は勢いだったので経営とかも考えずに行動してしまった。どうしていこうかと考えました。ただ一つ言えるのは、多分この商品は他には無い。世界中探しても多分かぶるものが少ないと思った。地元に素材があるから何かあっても無くなる事もない。つまり、作れなくなることはないだろうと。

試食してくれた方からの反応は良く、ダイレクトに美味しさを伝えられる商品なので売れると思いました。あとは売り方だろうな~。最初は修行と思い3年間は行商を北から南まで、とにかく現地に持って行っていろんな人に食べてもらいました。

前の会社から販路と設備全部を引き継いだので、ゼロからやマイナスからのスタートではなかったことが幸いでした。桃だけだと、もしその年の桃に何かあったら厳しい状況になります。前の会社からの引継ぎ事業があることで、少しだけ気持ちも楽でした。事業の中で無添加の漬物屋さんもやっていました。それをもう1回リブランディングしたらどうだろうか?無添加で漬物を作っているところは少なく、市販の漬物には何かしら必ず入っています。その作り方もそのまま引き継いで1年間やってみようと決意。季節のものと通常あるものを組み合わせながらの経営へ挑戦。何とか続けていけそうだと感じました。ちゃんとブランディングするために、パッケージも変えてみました。

「ももふる」を続けてこれたのは、一番にはまず素材を確保できたということです。農家さんも誰でもいいわけではなく、30年後も続けている人じゃないと意味がないなと思っていました。若者がやる気を無くしてしまったら、農業自体が無くなってしまいます。素材すら無くなるので商品ができなくなってしまう。事業を続けていくことが困難になってしまう。それは困りますよね~。

信頼できる人とまず話をして、こういった想いで作りたい商品です!と気持ちを伝えます。私たちの想いに賛同してくれる人と取引するように心掛けています。今では20件ぐらい増えました。誰でもいいからお願い!いらない桃をください!ではありません。賛同してくれる人は、美味しくできた完熟桃をちゃんと出してくれます。

皆さんも過去にあると思います。「わざわざ買ってきたのに、高かったのに、いまいちだった」、みたいなことが。そういった経験を思い出すと安全牌のところを選んでしまいがち。凍らせて一番おいしい完熟状態をいつでも食べれるようになるっていうのは冷凍の利点だと思っています。

6次化商品に求めているモノ・コト・トキについて

うちの商品で桃のピクルスがあって、それが商品の中で一番古いんです。40年以上も前に、それこそ今94歳の福島のおばあちゃんたちが作っていたものなんです。これって、今でいう 「6次化商品」 だと思うんです。

それが高齢化してみんな作れなくなってきちゃって。力仕事だから1回なくなってしまったんです。このままだと、これがなくなっちゃうと思ったんです。昔はあたりまえにあって今はない桃の漬物って、ある意味新しいな~と思いました。私が引き継いだ前の会社の人から作り方を教えてもらいました。そして、これを今の形にしよう!って思って試行錯誤のうえ誕生した商品が「ももぴくるす」です。

もう一つは「いかにんじん」。昔から作っていて誰でも作ってるじゃないですか。昔から福島にあるあたりまえの郷土料理「いかにんじん」。県外の人にしてみればすごい興味津々なんです。西日本とかに持っていくと「いかにんじん」?ってなるみたいな。ここ5年ぐらいで、秘密のケンミンSHOWでやってたやつだっ!てよく言われるようになりました。そんなに推してなかったのに、今や凄く売れてるんですよ。タイミングや売り方次第によっては、新たな魅力を感じてもらえる昔ながらの商品って他にもたくさんあるような気がします。

誰にPRするのか、どういうふうに掲示するのか、今の形にどう変えてみようか、みたいなのを見直せば、新しい商品をどんどん作らなくてもそこにあるものをどんどん変えていけるのかな~と思ってます。

それぞれの個性をどういうふうに魅せていくのかを一歩一歩掘り下げていくことが大事。桃のファンじゃなかったとしても、いかにんじんのファン、高田梅のファン、みたいにファンができていけば何かしらあるんじゃないか?と感じています。それが答えになってるかわかんないんですが、”モノ ・ コト ・ トキ” をコントロールすれば可能性ってすごく広がるのかなと思います。

商品開発までの重要視されたプロセス

自分も作るプロではなかったし、商売も初めてだったので感覚が多分そっちから見れなかったんだと思うんです。だから買う側とか使う側とかその素材を出す側の視点からいろんな人の逆に見れたのかなと今は思ってます。やっぱり買う側の視点にならないとマーケティングって意味がないんです。どの世代とか、どういう層の人とか、っていうとこもある程度は想定しないとブレちゃうじゃないですか。そのブレ幅を小さくするには1番ブランディングが大事だと思ってます。オリジナルを作るなら、商品のブランディングから始めることをお勧めします。掘り下げる作業が大事になってくると思います。

私は自分の会社を作る上で1年目2年目もすごい悩み続けてました。書体1つとっても必ずこの書体を使うとか、この色を使うとか全部決めてました。そこからブレる時はテーマを決めて、このカテゴリーだからここまでOKですよっていうのもデザインやる子と一緒に話し合いました。伊達の商品ってすぐわかるようなマークが必ず入っているとか。必ずこの色が入っているとかでもいいです。商品に対するイメージづけです。ほとんどの情報は目に入ってくるのですごく大事なんですよね。

想像させるっていうんですかね。試食もできない場合はもう響きとか見た目で想像させるしかありません。いかにそれがクリアに想像できるかっ?ていうところです。全く訳わかんない名前つけた時に想像が浮かばないのは逆効果です。日本人は特に想像力がたくましいから。そこを刺激するようなネーミングだったり、見せ方っていうのが大事なような気がします。

ひらがな、カタカナ、漢字、日本語は3択あるじゃないですか、さらに英語も。なるべく私は全部ひらがなにしたり、字体もゴシックよりは明朝、さらにはヒラギノとかっていうのにしてます。そうすることで何となく決まってくるんです。

6次化商品へ取り組む際のアドバイス

昔は考えて終わるタイプだったんですよ。小さい時とか。考えて考えて考え抜いて、結局何もできなかったのが嫌で。多分そっから反転したんだと思うんですけど。とりあえずやってみて、結果によってまた考えるっていう方が早かったり、近道だったりする。

自分で考えて行動してやったことって自分の意思でできたことだからちゃんと残るんです。誰かに言われてやると、何でそうしたのかが自分の中に落とし込めない限りは正解にたどり着けないままに。

失敗もあるんですけど、失敗したらそれやんなきゃよい話です。その人のやり方によって同じことをやったとしても、うまくいく時といかない時は絶対あると思います。

人が変われば変わるし、やり方が変われば変わるから。同じゴールがここだとしても人それぞれ道のりは様々ですよね。だから自分でとりあえず筋道立ててみます。止まっちゃうと止まったままになってしまう。そこはやっぱり動く勇気というか判断力がないといけないのかな~と思います。

あとは続ける勇気が必要です。私自身、最初始めたときには、いろんな人から「やめろ!やめろ!」って言われました。

有名な農家さんや有名な人が何人か来て「君これ作るの大変でしょう」、「お金にもならないしそのうち大変で悲鳴あげて辞めることになるよ!」って。なんでそんなこと言うの?って思ってました。それを言われた時に辞めなくてよかったなと思ってます。「ももがある」って名前も、最初にやめろっ!て言われたネーミングなんです。今はみんな褒めてくれるんですよ。

私は仕事で多くのアイディアをぼんぼん出したりしますけど、確実にそれができるかどうかってわからないものが結構あるんです。こんなのあったら面白いですよね!って感じで。けどそれでいいんだと思うんですね最初は。できるかどうかはやっぱりいろいろと調べたり動いてみないとわからないので。

考えたら新しいものが生まれるし、新しいから誰もやってないわけですよ。前例がない不安から失敗が頭をよぎるのも当然です。それでも自分の中(想像・イメージ)で、いけそうな期待感とかがあれば進んだ方がいい。それが最初になるかもしれないし。

それぐらいの刺激を持ってやらないと、そういうのって続かないと思うんです。

どこか途中で挫折しちゃうのってそういうところだと思います。誰でも理解しやすくて本来だったら売れるものって結構あるはず。売れない、伸びない商品の共通点は作って満足して終わっちゃっているところ。そこから先のことを考えてないだけかな。将来像をしっかりイメージすることをお勧めします。

アフターコロナで変わる消費者価値観について

不要不急の外出自粛生活やおうち時間の需要は当面続くと思っています。遠くに行けないからこそ美味しいものをお取り寄せ(通販)で欲を満たすとか、旅の疑似体験というようなところが求められているのかなと思います。

逆にアフターコロナでは、お取り寄せ(通販)できなかったものを食べに出かけたり、そこでしか体験・経験できない場への訪問が増えるような気がします。

ただ商品を売る、ただ食事を提供するなど今までと同じサービスでは満足してもらえないように思えます。今後は体験型とか何かちょっと付随するもう一つの価値みたいなのが必要になってくるのかな~。この商品はお取り寄せでも食べれたよね!じゃなくて、その成り立ちが体験できるとか。それこそフルーツ狩りとかもそうですよね。農家さんのフルーツ畑で、自分で捥ぎ取ってその場で味わうとか。そういうのって他にはない体験であったり経験だから。それ自体が価値に結び付く。食文化とかその土地を感じてもらえるような何かを、商品と上手く繋げることが必要だろうと思っているところです。

@ 2021 だてな美食 on・line 食ping プロジェクト